では、今回のような犯罪から身を守るにはどうしたらいいのか。清永さんが重視するのは、子どもたちの「訓練」だ。

「逃げる、大声で叫ぶ、防犯ブザーを鳴らす、と言われても、いざというときに簡単にできるわけではありません。事前の訓練が必要なのです。防災と同様に、防犯訓練も広く行われることが大事ではないでしょうか」

 前出の小宮さんはこう言う。

「カリタス学園は、バス停に教員も配置し、しっかり見守りもしていた。これ以上パトロールを強化しても、今回のように死を覚悟した『自爆テロ』には通用しないし、地域住民も立ち向かっていくのは危険です」

 では、一体どうすれば?

「現時点で私の知る唯一の処方箋が、防犯カメラに興奮状態の人を認識できるソフトウェアを搭載することです。防犯カメラに映った人の挙動から精神状態を解析して不審者を検知するもので、犯罪が起きる前に警察に自動通報して未然に防げる可能性がある。実際にソチ五輪などで利用されています」

 前出の片田さんは、今後も無差別に人を襲う事件が起きるのではないかと警鐘を鳴らす。

「現代人は職場、隣近所、親戚などのつながりを切り捨ててきた。リストラや非正規労働者の切り捨てなどで失職のリスクが高まっており、社会に不満を持つ人も増えている。今の時代を象徴する事件だとも言えるのではないでしょうか」

(編集部・澤田晃宏、川口穣、深澤友紀)

AERA 2019年6月10日号より抜粋