隣の席にシンガポールからやってきた観光客グループが座った。韓国人のガイドに旧統一教会の話を聞いてみた。

「以前、カピョンで急病人が出て、救急車で旧統一教会の病院に搬送された人がいたようなんです。最初は心配したけど、すごく対応もよくて治療も的確、街の人も近くに病院があって安心って話してました」

 空気が一変したのが、日本の安倍元首相の銃撃事件だったという。

「コロナ禍に新興宗教の新天地イエス教会の集団感染が起きて、韓国の新興宗教への風当たりは強かったんです。そんな時期の銃撃ですから、一気に旧統一教会への関心も高まりました。韓国で一番大きい新興宗教といったら旧統一教会ですから。いまは皆、距離を置いていると思います」

 ミサリ路は北漢江に近い。川沿いのペンションから白亜の天正宮が見えるところもあるという。子どもから「あれ、なに?」と聞かれ、どのように説明していいのか悩む親も多いという。

 翌朝、電車でソウルに戻った。駅に近い旧統一教会のビルを見に出かけた。

 ソウルの一等地に建つ大きなビルだが、人の気配がなく、なんとも異様な雰囲気を持つビルだった。

ソウル駅に近い一等地に立つ旧統一教会の本部。1階にカフェがあったが客はいなかった
ソウル駅に近い一等地に立つ旧統一教会の本部。1階にカフェがあったが客はいなかった

(下川裕治)

■しもかわ・ゆうじ 1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)。

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