同行の知人がいう。以前、このメッコールのコマーシャルに起用されたタレントが非難を浴び、ギャランティーを全額、別の団体に寄付するというもめごとも起きた。
ミサリ路は音もなく、穏やかな空気が流れている。しかしこの盆地の外に視線を向けると、“不協和音”に遭遇してしまう。
山の上に立派なHJマグノリア国際病院が見える。もちろん教団の経営だ。幼稚園、全寮制の中学、高校や大学……。ひと通りの施設がそろっている。いたるところに「孝情」という漢字や「HJ」という文字が見える。
孝情は信者のブログによると、「孝は父母様への親孝行、情は父母様と永遠の因縁を結ぶ」ということらしい。父母様とは文鮮明氏と妻の韓鶴子氏を指す。孝情は韓国語で「ヒョジョン」。HJはその頭文字だ。
天正宮に向かう坂道をのぼってみた。いちばん下では「天地鮮鶴苑」の建設が進んでいた。聖殿や美術館などが入る地下4階、地上3階の建物だという。総工費は500億円を超えるといわれる。資金は日本を中心にした信者の献金が充てられるのだろう。さらに進んだ。天正宮の手前にゲートがあった。職員がいて、ここから先は信者以外は入れないと丁寧に断られた。
ミサリ路からカピョン駅に出た。ソウルの中心から来た電車が着くと、観光客が降りてくる。韓国人よりアジアの人たちが多い。駅前の観光案内所で聞くと、ドラマ「冬のソナタ」のロケ地になった南怡島(ナミソム)に行くのだという。
北漢江という川のなかにある島で、観光地になっていた。ペンションも多いという。教団施設が集まるミサリ路からそう遠くない。それとなく旧統一教会について聞いてみたが、多くは答えてくれなかった。どこか避けている風でもある。
夜、駅に近いタッカルビの店に入った。チュンチョン(春川)に近いカピョンはタッカルビの店が多い。タッカルビは多めの野菜と鶏肉を鉄板で焼く料理だが、僕が入った店はトッポギという餅も入れた。「トッポギから先に食べなさい」と店の人が教えてくれた。