雪道を5分ほど歩いた。左手に「HEAVEN・G・BURGER」という円形の建物が見えてきた。このハンバーガーショップも教団の経営だ。入ってみる。店内で勧誘を受けることはないとは思うが、どうしても足どりがぎこちなくなってしまう。
店はハンバーガーショップというより、おしゃれなレストランといった感じだ。昼どきだが客はいない。若い女性店員がメニューを手に席に案内してくれた。メニューにはしっかりとした日本語表記があった。明洞のレストランに行ったときに登場した、いい加減な日本語メニューとは違う。それだけ日本人がやってくるということか。
ハンバーガーを頼んでみた。信者のブログなどでは、ハンバーガーは「真のお父様が愛されたメニュー」と紹介されている。お父様とは創始者の文鮮明氏だ。ポテトや飲み物がついたセットメニューで1400円ほど。案内役で同行してくれた韓国人の知人が頼んだ牛丼は1300円くらいだった。
ハンバーガーは肉汁たっぷりのパテでなかなかのレベル。ボリュームもある。ほお張りながら、店員の女性が気になってしまう。
「彼女も信者?」
「たぶん。ここは教団の経営だから」
楚々(そそ)とした2人の女性店員の顔が、日本で訴える信者2世の顔とだぶってしまう。この店の脇道の先には修練施設があるという。そこで先祖の原罪を断ち切るという旧統一教会特有の儀式が行われる。
それを受けるためには、事前に莫大(ばくだい)な「解怨(かいおん)金」を納入しないといけないという。静かなレストラン、若い女性店員、満足のハンバーガー……。しかしその向こうの日本には、多くの被害者の声が渦巻いている。しかしその折り合いはどうしてもつかない。
飲み物はメッコールを頼んだ。教団が製造・販売する清涼飲料水だ。かつて韓国ではどこでも飲むことができた。僕もよく飲んだ。しかし最近はほとんど目にしない。
「メッコールを飲めるのは、ここだけじゃないですか」