昭和の雰囲気を残した昔ながらの地域の台所である「出町商店街」。教室からほど近くにあるこの商店街が、今期低学年クラス(小学1・2年生)が取り組む探検プロジェクトの舞台です。
「『商店街』という言葉を聞いて、頭に思い浮かんだことを教えてくれへん?」
そんな私の投げかけから授業はスタートしました。
「たくさんのお店があって、人が集まっている感じがする」
「そうそう、特に(豆餅で有名な)ふたばはいつも行列ができてんねん」
「お店の種類もいろいろあるよなぁ。あと、売ってるのはモノだけじゃないし」
「商品が売れ残ったら、夕方に安売りしてることもあるで」
「お客さんが少ない店はやっぱり潰れちゃうよね……」
子どもたちはクラスメートの意見に刺激を受けながら、自分の頭に思い浮かんだイメージを言葉にしていきます。私はそれらを漏らさず模造紙に書き留めていきます。
たくさんの意見が模造紙を埋め尽くしていく中、ある子がふとつぶやきました。
「そもそも、どこからどこまでが出町商店街なんやろ?」
この素朴な疑問にはクラス全員が共感した様子で、これを皮切りに彼らはそれぞれ自分なりの仮説を述べ始めます。
「(通路の)屋根があるところちゃう?」
「多分、アーケードの外のお店は商店街の近くにたまたまあるだけやと思うわ!」
「けど、私、アーケードがない商店街を見たことあるよ」
通路の屋根の有無が商店街かそうでないかを分ける基準なのではという意見が若干優勢なものの、事実は不明なまま。どうやら今後みんなで究明していく課題の一つになりそうです。
テーマに関する既有知識の確認を終え、早速我々は教室を飛び出し、商店街へフィールドワークに出かけることにしました。普段は鴨川デルタへ行く通り道程度の認識だった商店街も、じっくり観察しながら歩くといろいろなものに気付きます。
みかんの種類が豊富で、まるで専門店かと見紛うばかりの八百屋さん。
アーケードにでんとぶら下がる巨大な魚や蜂の巣の模型。
あちこちに貼られたポスターに描かれている謎の猫のキャラクター。
コッペパンやドーナツに巻かれてディスプレーされている時計の数々。
「怪しくありません」という階段のメッセージが逆に不安を募らせる不思議なカフェ……。