「かといって私はGDP不要論者ではありません。完璧ではなくとも利用価値の高い政策ツールなのは確かですから。ただGDPがどのように機能し、何を測定対象から外したかに意識的であり、環境問題や幸福度、公共サービスの価値を測定するなど、複数の指標を組み合わせて判断することは重要だと考えます」
最後に日本の現状についても聞いてみた。
「海外から見て、日本の経済状況はそれほど悪くないと思います。最大の問題は女性の社会的な地位の低さ。政治家、企業の管理職に就く女性の人数が、あまりにも少ないのは大きな問題です」
(ライター・矢内裕子)
■書店員さんオススメの一冊
現役判事による異色のエッセイ『裁判官は劣化しているのか』は、裁判官教育制度の問題点をするどく指摘する一冊だ。リブロの野上由人さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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著者は有名な裁判官である。なぜ有名か。ひとつはTwitterへの投稿が「問題視」され、裁判所から「厳重注意」や「戒告」処分を受けて注目を集めた。もうひとつは法律実務書のヒット作『要件事実マニュアル』の著者で、法曹界に読者が多い。
この度、ほぼ同時に2冊を上梓した。「戒告」処分を受けるに至った「分限裁判」を題材に司法の現実を綴る『最高裁に告ぐ』と、裁判官教育制度の変質を嘆き、その問題点を指摘する本書である。
変質のきっかけは2000年代の司法制度改革だったという。司法試験合格者を増やし、裁判官の増員を図った。その結果、裁判官が「劣化」しているとしたらどうだろう。内部をよく知る現職の裁判官だから書ける具体例には驚く。名指しされた若い世代も含め、できれば他の裁判官からの異論反論も読んでみたい。
※AERA 2019年5月20日号