異業種企業からのスポーツ産業参入が増えている。もちろんメリットだけでなく課題もあるが、企業の技術力がスポーツの可能性を広げるかもしれない。
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スポーツと縁遠かった企業が、技術力を生かしてスポーツ用品開発に乗り出すケースは多い。しかし、大阪成蹊大学の植田真司教授(スポーツ経済学)によると、自動車部品メーカー、旭鉄工が製作するアイスクライミング日本代表の門田ギハード選手(30)のアックスのような成功を収めるのは簡単なことではないという。
「人気競技なら大手メーカーが多数参入して技術的にも完成されており、勝機がない。逆にマイナー競技では資金の壁が大きく、開発を続けられないのです」
行政の支援で資金を得て開発に挑む事例もある。東京都大田区のカーボン成形会社、The MOT Companyでは、車いすメーカーなどと連携し、車いすテニス用の車いす開発に乗り出している。資金はパラリンピックに向けて都と大田区が実施する障害者スポーツ用具開発支援の補助制度を活用した。それでも、ビジネス的にはウマイ話ではないという。濟藤友明CEO(71)は動機をこう説明する。
「技術を生かしてモノをつくる、それによって使う人に喜んでもらえるというのがモノづくりの原点だと思います」
従来はアルミなどで作られていた車いすを、同社の加工技術を生かし、カーボンで開発した。カーボンは金属より軽量で力の伝わり方がスムーズな一方で、車いすとしての性能を高めるためには特殊な技術が必要だ。レーシングカーのパーツに使う成形技術を用いて、アルミをしのぐ性能に仕上げたという。
あとは、乗り手に合わせて調整を施すだけ。しかし、選手にとって全く新しい車いすに乗り換えるのは大きな挑戦だ。体を完全に慣らすには、1年程度かかるともいわれる。東京パラリンピックまであと1年3カ月あまり。使用を検討する選手はいるが、決断に踏み切れていない。