山下:人を見ているからでしょうか、制度の議論がしづらくなっていますね。こうした状況を、ご本人たちにも申し訳ないと思わないのでしょうか。
久能:今後の皇統をどうしていくのかということを総括的に考えないといけないと思います。
近重:そして、愛子さまがもし女性天皇になられるのなら、少しでも早く国は示すべきだと思います。お心構えも、ご準備も必要です。
久能:上皇后陛下は天皇陛下がお生まれになったときに、「あづかれる宝にも似てあるときは吾子(わこ)ながらかひな畏(おそ)れつつ抱く」という御歌(みうた)を詠まれましたでしょう。将来の天皇を育てる覚悟をお持ちになり、すでにうたっておられた。
山下:そうですよね。天皇陛下はそんな環境でお育ちになりましたから、子どものころから「将来は皇太子、いずれは天皇になる」という意識を持たれていたはずです。考えを育まれるうえで、とても大切なことです。急に皇太子や天皇になると決まることは制度上あり得ると思いますが、できれば将来を踏まえたうえでお育ちになるのが望ましいと思います。
近重:現行の皇室典範のまま進めば、ゆくゆくは悠仁さまが皇位を継承されることになります。けれども、私は皇位継承者がお一人しかいないという状況は、避けるべきだと思います。先日報じられたお茶の水女子大学附属中での事件もあり、何が起きるかわかりません。上皇陛下が望まれているのは、時代を超えた安定的な皇位の継承ではないでしょうか。
(構成/編集部・小田健司)
※AERA 2019年5月20日号より抜粋