中国や韓国、ロシアはすでに、中央アジアへ食いつき始めている。韓国は2017年にウズベキスタンのミルジヨエフ大統領を国賓として招き、今年4月には文在寅大統領が中央アジア3カ国を歴訪するなど交流を強める。
「ウズベキスタンと韓国はもともと関係が深かったものの、ミルジヨエフ大統領個人には韓国との太いパイプはありませんでした。しかし、17年の訪韓で一気に親韓になり、民間企業への優遇だけでなく、保育園制度なども輸入しようとしています」(同)
日本はそういったアプローチが全くできていないという。
「日本は対中央アジアのODAを長く続けていて、国民には親日派が多い。中韓と比べ大きなアドバンテージです。民間企業の参入も、もっと国を挙げて後押しすべきです」(同)
カザフスタンでは、前大統領の後を継いだトカエフ大統領が6月に行われる大統領選の与党候補者(事実上の当選者)に内定した。
「トカエフ大統領はモスクワ国際関係大学を経てソ連外務省に入ったエリートでロシア高官とつながりが深いほか、北京留学、在中国大使館勤務の経験もある『知中派』です。一方で国連事務次長も務めるなど外交的にはバランスが取れた人ですし、前大統領の方針に逆らうこともない。日本との関係が大きく悪化する心配はありません。しかし、座して待つだけで関係が深まることもありません」(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・宇山智彦教授)
ロシア、中国などの大国に囲まれ、ヨーロッパにも近い中央アジア。シルクロードの要衝として栄えたその地政学的な重要性は、今も失われていない。日本企業が次に目指すべきは、この地だろう。そのためには、国を挙げた戦略が必要だ。(編集部・川口穣)
※AERA 2019年5月13日号より抜粋