


小児科専門医であり2児の父でもある加納友環さんは、ホームページなどで医療情報を発信する中、病院に来る母親たちの情報源はインスタであることに気づいた。試しに検索してみると、ネガティブなキーワードや誤った情報が飛び交う現状を知る。
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なんだか体の具合が悪いな、と思ったらとりあえずスマホでググる──。多くの人が習慣的に行っていることだろう。
だが、ネット上にある医療情報は当然、確かなものばかりではない。命にかかわる医療情報を扱うサイトが、誤った記事を大量に公開していたとして、2年余り前にはDeNAのWELQ(ウェルク)が問題になった。
こうした状況に歯止めをかけようと、医療者自身が、ネット上で積極的に発信し始めている。根拠のない医療情報があふれて「無法地帯」となっていたインスタグラムでも医療者たちが立ち上がった。その名も「インスタ医療団」だ。
先陣を切ってインスタで投稿を始めたのが小児科専門医の加納友環さん(36)。最初の投稿は昨年11月中旬。やさしいピンク色をベースに赤ちゃんと注射器のイラストで作った図をアップし、「赤ちゃんの誕生おめでとうございます!2カ月から、赤ちゃんの健康を守るために予防接種を」と発信した。
加納さんはもともと、「パパ小児科医(ぱぱしょー)」のアカウント名でツイッターやブログ、ホームページなどで積極的に医療情報を発信していたが、病院に子どもを連れてくる母親たちがツイッターよりもインスタを利用していることに気づいた。さっそくインスタで、試しに「ワクチン」と検索すると、「ワクチン不要論」「ワクチン副作用」「ワクチン反対」といったネガティブなキーワードが上位に並んだ。食物アレルギーやステロイドを巡っても誤った情報が飛び交っている。
「お母さんたちの情報源であるインスタで医学的に根拠のある情報がほとんどなく、誤った情報が野放しになっている。医療者が情報発信することで、悩んでいる人、迷っている人への道しるべになれば、と考えました」