厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会が、指針の見直しを進めている。3月8日の研究会では改定案が大筋で了承された。ポイントは主に二つ。乳幼児期のアレルギー疾患について、母乳に「予防効果はない」と明記されること。母乳と粉ミルクを併用しても「肥満リスクは上がらない」とすることだ。母親たちを苦しめるいきすぎた“母乳神話”のブレーキとなるか。
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ある女性は、長女を産んだ際、入院中におっぱいがなかなか出ずに看護師からミルクを与えられた時は「負けた気がした」という。だが、産後すぐに東日本大震災があった。ストレスがかかり、一時的に母乳が赤くなることがあったという。
「母乳は母親の体調などにも左右されて、完母をめざしてもうまくいかないこともある。後ろめたさを感じずに、ミルクも使えるようになることがいいと思います」
ただ、母乳育児の良さは育児雑誌やインターネットの情報サイトなどでも流布される。現状では産婦人科の中にも「母乳がアレルギー予防に効果あり」と、ホームページなどで宣伝しているところもある。
厚労省が妊婦に対して行った調査では、「ぜひ母乳で育てたいと思った」人の割合は43%。「母乳が出れば母乳で育てたいと思った」の回答も合わせると、9割を超えた。
産後の授乳期の栄養法についての調査でも、生後1カ月では51.3%が母乳だけで育てている。また、産後1年未満で働いた人でも、母乳栄養の割合が49.3%で、10年前より22.6ポイントも増加。面倒な搾乳をしてでも「母乳でなければ」と思う母親は増えているようだ。
母乳こそ絶対だという意識が蔓延するなか、ネット上では母乳の売買も行われるようになり問題化している。衛生面などで悪影響を与えかねない。それほどまでの母乳神話にブレーキをかけようとしたのが、今回の改定の動きだ。
厚労省が改定を進める「授乳・離乳の支援ガイド」は、医師や助産師など、産後ケアに関わるいわばプロ向けに出される指針だ。