


AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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1959年、イギリスの保守的な海辺の町で書店を開こうとする女性の奮闘を描いたイザベル・コイシェ監督(58)。
「10年前、タイトルに惹かれて原作を読んで、すぐに『映画にしたい!』と思ったの。『いまの時代に書店を開く話?』と眉をひそめられもしたけれど、エミリー・モーティマーやビル・ナイなど素晴らしい俳優の協力を得て、実現できて本当に嬉しい」
世界中で本離れが憂慮され、書店が消えているいまこそ、描く意味があったと話す。
「私自身も本や書店が大好きだし、ページをめくる感触、物質的な本のあの重み──それこそが著者と直接つながる方法だと思う。映画を劇場で体験してほしいと思うのと同じね。それに本好きはまだまだいると確信している。私の家がある南仏の町は、人口800人に対してなんと18軒も書店があるのよ!」
もし、監督がマイ・ブックショップを開くとしたら?
「『ダ・ヴィンチ・コード』のようなベストセラー本は絶対に置かないわ!(笑)。私の書店に置くのはこの映画に出てくるような本。レイ・ブラッドベリやウラジーミル・ナボコフ……村上春樹や小川洋子の作品も大好きなの」
菊地凛子を主演にした作品もあり、自身の制作会社の名前は「ミス・ワサビ・フィルムズ」。かなりの日本通だ。
「初めて日本に来たときから、母国スペインと同じように居心地がよかった。パエリアを作るときには柚子を使うし、私のワードローブの黒いコートは全部ヨウジヤマモトよ」
ドキュメンタリーも手がける。2014年にはアフリカ・チャドで独裁政権の犠牲者を追う作品を発表した。
「私の映画には闘いと贖罪、希望の物語という共通点があると思う。つらい体験や過去があっても世界をよりよい場所にしようとする人を描くのが好き。この世界は美しく、同時に邪悪でもある。そのことに向き合った作品が好きだし、私も観客に何か“気づき”を与える作品を作りたい」