それだけに欧州当局が中国に次いで早い段階で737MAXの運航停止を決めた際には、「米欧の両航空会社の熾烈な販売競争が背景にあるのでは」との見方も出たほどだ。
■大統領が事故原因示唆
現時点でFAAは、5カ月で2回の墜落事故を引き起こした原因を特定してはいないが、有力な原因とみられているのが、737MAXが、操縦性向上のため世界で初めて導入した「MCAS」というシステムだ。
翼が、空気の流れに対してどれぐらい傾いているかを「迎角」という。機首が上がるほど迎角は大きくなる。迎角が大きくなりすぎると、航空機は前に進む力を失い、墜落してしまう。出来の良くない紙飛行機が投げたとたんに急上昇し、落ちてしまうのと似た状況だ。
これを食い止めるためには、パイロットが速度を上げて機首を下げ、機体を前傾姿勢にする必要がある。MCASは迎角をセンサーで検知し、失速しないように自動的に機首を下げることでパイロットを支援する最新鋭のシステムだ。
元日本航空機長で航空評論家の小林宏之氏はこう分析する。
「迎角を検知するセンサーか、センサーが検知したあとで自動的に機首を下げさせる仕組みに不具合があったのではないか」
エチオピアの墜落事故の現場で機体がほとんど残らないほど激しく炎上していたのも、離陸直後で機首は上がっていて実際には失速していないにもかかわらず、システムが失速していると誤認し、自動的に機首を下げて速度を上げた結果ではないかとの見方だ。
「時速600~700キロの高速で地上に激突したため、バラバラになったのでは」(小林氏)
安全のために導入したはずの新システムがあだとなった可能性が高いというわけだ。
こうしたシステム的な不具合が事故の原因ではないかという見方は、トランプ大統領も13日に運航停止の大統領令を出す前日にツイッターで示している。
「もはやパイロットではなく、MIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピューターサイエンティストが必要になっている。多くの製品(機材)がそのような状況になっている。不必要な改良が行われている」