がんの治療において、早期に発見できるか否かは重要だ。医師によると、がんの中でも最も患者数が多いとされる大腸がんは、症状から早期発見することが可能だという。どんな症状に注目すればいいのか、話を聞いた。
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16年に全国で新たにがんと診断された人はのべ約99万5千人──。厚生労働省は1月、全国の医療機関に情報提供を義務づける全国がん登録に基づく、初の全数調査の結果を発表した。部位別で最も患者数が多かったのが、大腸がんだ。
「がんは症状が出づらい、また、出た時には進行しているケースが大半ですが、大腸がんは比較的早期でも症状に気づくことができる場合があります」
そう語るのは、聖マリアンナ医科大学東横病院(川崎市)消化器・一般外科教授の古畑智久さんだ。大腸は小腸から肛門にまでつながる約2メートルの臓器だ。小腸側からの結腸と肛門付近の直腸に分けられる。大腸がんが発生する割合は2対1で結腸が多いといい、大腸のなかでも症状が出やすい場所があると古畑さんは指摘する。
「大腸は小腸で吸収した食べ物の残りかすから水分を吸収します。そして、肛門に向かって便を形成していきますが、小腸寄りの結腸では水のような便で、がんが大きくなっても通ることができ、症状が出にくい。一方、肛門に近いS状結腸や直腸では便は固形化され、自覚症状が出やすくなります」
どのような症状が出るのか。
「がんは正常な粘膜と違って出血しやすい。固形化した便にこすれて出血すると、それが血便や下血の形で現れます。また、肛門に近い部分だとがんがそれほど大きくなくても、便の通りが悪くなり、便秘や残便感につながることも多くなります。がんが大きくなると、腸が閉塞してきて、おなかが張るような感じも出てきます」
3人の子どもがいる都内の会社員女性(49)は18年春、大腸がんの手術から約1カ月で職場復帰を果たした。5年ほど前から断続的に血便があったが、
「痛みもなく、ほかの自覚症状もなかったので、痔かなと自己判断して様子を見ていました」
子どもがいると自分のことは後回しになりがちだ。血便は気になってはいたが、場所が場所だけに受診への抵抗もあり、何でもないと自分に言い聞かせて放置していた。しかし──。