市川海老蔵、中村獅童らが立ち上げた六本木歌舞伎。第三弾目となる今回の演目は、芥川龍之介の「羅生門」だ。V6の三宅健が下人役で出演する。歌舞伎初挑戦となる三宅に、海老蔵は「舞台に居るだけでいい」と話す。公演にかける思いを、それぞれの視点から語り合った。
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市川海老蔵:三宅さんは舞台に居てくださるだけでいいのです。前回の六本木歌舞伎第二弾「座頭市」に出演してくださった寺島しのぶさん。歌舞伎俳優のお嬢さんですが、女性ですから歌舞伎をやってきたわけではありません。でも、こちらが何かを求めるのではなく、「女優 寺島しのぶ」が歌舞伎の舞台にいる。それでいいのです。冷たい言い方ではなく、それがその人そのものだから。私も含めてね。今回も歌舞伎の所作ごとでおかしなことがあればお教えします。おかしいところだけ削ればおかしくないわけです。良いところまで削ってはいけない。私があまり余計なことをしないということが、一番良い選択ではないかと思っています。
三宅健:そう言っていただけるとちょっとだけ肩の荷が下ります。僕は歌舞伎とはまた別ですが、落語も聴くんです。その中に「中村仲蔵」という人情噺があるんですが、そこで「仮名手本忠臣蔵」の斧定九郎の話を知りました。歌舞伎俳優の初代中村仲蔵さんが、誰もやったことのない定九郎像を作り上げた話ですが、忠臣蔵を見ていても、「仲蔵さんが作り上げた話が今の時代までずっと続いているんだ」と感動しますね。今、海老蔵さんが自主公演の「ABKAI」や「六本木歌舞伎」などいろんなことに挑戦されているのはすごいと思います。
海老蔵:ところで出演が決まられて最初に何に取りかかられましたか。
三宅:日本舞踊と立ち廻りのお稽古をちょっと。
海老蔵:立ち廻りは映画で経験があったのでは?
三宅:それがやったことがないんです。
海老蔵:そうでしたか。でも、日本舞踊は簡単にはできないと思います。基本的に若い時からやってないとすぐに習得するのはかなり難しいですよ。そこは演出次第ですね(笑)。三宅さんの後輩の中山優馬さんがABKAIの第4回公演に出演してくださいました。彼は立ち廻りに慣れてきた最後の方でヒップホップを取り入れてましたよ(笑)。それはそれでいいわけです。決まりごとはありますが、六本木歌舞伎ですから堅苦しく考えなくていい。