マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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「縁」とか「運」とかについて考えたい。

 何故そんなことを言い出したかというと、私の周りにそういうことを言う人が多いからである。

 今自分の身に起こっていることは、目には見えない因果律によって導かれた結果だとか、災いに見舞われ「そういう運だった」と納得したり、また、良きことがあったら、これ見よがしに「そういう縁があったのだ」と腑に落ちてみたりする。「現在」が先送りされた過去ならば、未来をより良いものに変えるために、常々意識してそこにセンサーを働かせておきたいと考える。そして人や現象に対して閉じるのではなく、開いておく。それが芸能人ってやつだ。

 芸能の世界はあまりに不安定だ。自分が目指してそこにいるのにもかかわらず、どうにも不安で仕方がない。衣食足りて以降の、究極のサービス業が芸能仕事。ここは「人気」が全て、で、どこにも体重がかけられないような足元では立ってる気がしないので何かにつかまってようやく安堵する。さらに言えば「生きていたい」どころではなく、「人よりご機嫌に生きていたい」あわよくば「尊敬されたい」とか、邪なことばかり考える。結果、ますますこの世界の条理がわからなくなり「縁」や「運」にすがるのだ。

 私や、私の周りがやっている「縁」事や、「運」事をここに書きたい。

(1)人のライブに花輪を出す(2)サイフに領収書を入れない(3)お札を逆さまに入れる(4)ピン札だけを持つ(5)サイフは一年に1度買い替える(6)靴は同じ方の足から履く(7)一年に1度手を買う(8)常に「運命的だわー」と言う(9)とにかく神社に行きたがる(10)折々の付け届けはマストざっと挙げたらこんな感じか。まだまだ他にもさまざまなゲン担ぎをしたりする人はいる。関心がない人にとっては奇妙に映るだろう。

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