15歳以下の子どもに発症する「小児がん」。つらい治療を終えても、その後も影響が残る「晩期合併症」に苦しむことは広く知られていない。治療後の課題や医療体制づくりなど議論が始まっている。
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最近は、小児がんサバイバーの医療と支援のあり方も、国が打ち出す「AYA(思春期・若年成人)世代」のがん対策の一環として議論され始めた。治療中または治療後に、進学や就職、結婚、出産などの節目が来て、この世代特有の悩みに直面する。
晩期合併症のある小児がん経験者で一般企業へ就職する人が増えつつあるが、現状では、「就労の壁」はまだある。
7歳で慢性骨髄性白血病を発症した宮城順さん(37)は、治療から丸30年がたった。
骨髄移植をする前、前処置で全身に放射線を照射し、大量で強力な抗がん剤も投与した。
中学生の頃、メンタル不調に悩まされたが、移植の拒絶反応を避けるために服用していた薬剤の影響かもしれないとは気づかなかった。不安が強く学校になじめないと、「怠けている」「気合が足りない」などと責められた。高校生になっても、声変わりさえしなかった。
極度に体力がなく、20代の頃は定職に就けなかった。
「僕はそもそも、病名も知らされていなくて。小児がんだったと知ったのは、20代になり、自分が受けた骨髄移植という言葉をネットで検索してから。自分で患者会を見つけ出し、講演を聞いて初めて、『晩期合併症』のことも知りました」
登壇した小児科医から、治療後も継続して診ていく「長期フォローアップ外来」があると聞いた。そこで、自身の移植を担当した医師を訪ねて紹介状を書いてもらい、都内の拠点病院を受診。治療の影響で男性ホルモンの分泌がないとわかった。
その後は近所の医院でホルモン補充療法を継続して受け、筋力がつき、フルマラソンを完走するほど体力が回復した。
「30代にしてやっと、『自分の時間』が流れ始めたなと感じて。僕自身が変化に驚いています」