いま、中国インバウンドニーズに変化が起きている。かつてのように現地で爆買いはせず、ソーシャルバイヤーといわれる日本在住の中国人に、SNSを通じて買い物を依頼するのが主流だ。消費そのものにも、“とっておき体験”をしたいというシフトが起きている。
* * *
中国人観光客は年々増加し、2018年は過去最多の838万人を突破、735万人だった17年から13.9%も伸びている。来日する中国人観光客たちは、日本に何を求めているのか。
中国向けのインバウンドマーケティングを行うクロスシーの山本達郎さんによると、観光客のニーズは「買い物などのモノ消費からコト消費にシフトした」という。
「沖縄や北海道などの観光地ももちろん人気ですが、観光スポット自体が多様化しています。景色が美しい知る人ぞ知るスポットや、グルメや工場見学といった、特別な体験のためにお金を使っていこうという動きも顕著です」(山本さん)
ここでも、カギとなるのはSNSだ。
「旅マエ、旅ナカ、旅アトの行動動線を見ると、旅行前には多くの人が、友人や家族、自分の好きな芸能人の体験した口コミを参考にしていることがわかります。日本を旅行する前に調べるサイトの上位に、日本の旅行の生中継サイトがランクインしていました」
中国ではSNSで影響力を持つインフルエンサーはKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれ、消費動向を左右するという。フォロワーが億を超えるKOLもいる。同社は1億2千万人のフォロワーを持つKOL、Papi醤(パピちゃん)が設立したKOLネットワーク、PapiTubeと提携、自社アカウントも含め、日本の情報を発信する。Papi醤の動画は日常ありがちなネタをテンポよくつなげ、視聴者の共感を呼ぶ「あるある系」。動画発信を通じ、日本に興味を持ってもらう狙いだ。
日本在住の中国人スタッフによる体験動画の反響が大きかったことが背景にある。中国人目線の発信は、中国人観光客の心をつかむ。女性スタッフが谷中の猫カフェやメイドカフェを訪れた動画を生中継で公開すると、中国語のコメントが溢れた。