東京にいると見えない日本があることを、つくづく突きつけられます。

 2021年の東京都議選は、58年ぶりに3回目の無投票当選者が出たことがニュースになりましたが、それは東京以外の日本の「当たり前」だったのでした。都議会の女性議員は約3割だけれど、それでも3割いるのは他の地域を見ると「画期的な未来」にすら思えてきます。なにより、日本を動かしているのは東京ではないという事実も、東京にいるとわからなくなりがちです。東京にいると、「世界」が隣にあるような気がして、ついついこの国のジェンダーギャップは最低だ! この国はおかしい! などともっともらしいことをツルツルと言いがちですが、地方にいると、「北欧に比べて云々」「先進国の中では云々」などという枕言葉でジェンダー問題を語る圧倒的な浮世離れ感に嫌気が差してきます。いや、違うだろう、日本の性差別問題について比較するのはEUとかじゃなく、むしろ大正時代の日本くらいでいいんじゃねぇのか? と本気で思ったり。

 というより、地方のこの現実こそが今の日本の現実なのでしょう。東京から日本を見ると見誤るけれど、地方から永田町を見れば腑に落ちるのです。この国の女性の地位の低さについて。それは国際的な評価の「ジェンダーギャップ」云々どころの話じゃなく、そもそもこの国は男女のギャップすら生まれないくらい女がいない、女が消えた国であり、民主主義の根幹である選挙がそもそも成立していない国であるという恐ろしい現実に気がつかされるのです。

 統一地方選の無風には訳がある。その無風の不気味さは相当なものですが、さてこれからどうなるのでしょう。24時間政治のことだけ考えているふうのオジサンたちが国を支配し滅びゆくのか……または……。ちょっとやそっとじゃ変わりそうもない日本の地方政治にこそ、異次元の革命が必要なのかもしれません。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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