「高卒生え抜き」で成功する選手が少なくなってきた代わりに目立ってきたのが「大卒即戦力」であり、その筆頭クラブが川崎である。2003年に入団した中村憲剛(中央大)がクラブの象徴となっていった中、2010年に小林悠(拓殖大)が加入し、さらに2014年に谷口彰悟(筑波大)、2015年に車屋紳太郎(筑波大)、2016年に長谷川竜也(順天堂大)、2017年に知念慶(愛知学院大)、2018年には脇坂泰斗(阪南大)と守田英正(流通経済大)と大卒で戦力となった選手が次々と入団。そして2020年には三笘薫(筑波大)と旗手怜央(順天堂大)が加入した。「大学経由」で力をつけた彼らがすぐさまチームの主軸となり、2017年から5年間で4度のJ1リーグ制覇という黄金期を築いた。スカウトの眼力、手腕もさることながら、風間八宏監督時代から築き上げてきた質の高い攻撃サッカーが、多くの大学生たちにとって魅力的に映ったことは確かだろう。

 優れた下部組織を持つ広島も、近年は大卒選手の獲得が目立つ。Jクラブで最も早くユース専用の寮を構え、これまで駒野友一、高萩洋次郎、槙野智章、柏木陽介など、多くの日本代表選手を輩出してきたが、その育成力を維持しながら「出戻り」が増加。2019年に荒木隼人(関西大)、2022年には満田誠と仙波大志(ともに流通経済大)、2023年にも山崎大地(順天堂大)と、広島ユース出身の大学生を再びチームに迎え入れている。その中で満田が1年目から不可欠な戦力となっている。別クラブにはなるが、かつては中村俊輔や本田圭佑、鎌田大地などがユース昇格を果たせずに高体連に進んでからプロ入りして大きく成長した例があるが、近年は満田以外にも伊藤敦樹(浦和ユース→流通経済大→浦和)や山川哲史(神戸U-18→筑波大→神戸)、そして三笘薫(川崎ユース→筑波大→川崎)のように「ユース→大学→プロ」の出戻りルートも増えてきている。

 そしてもう一つ、この「大学経由のプロ入り」と同じくトレンドになっているのが、「J2経由のJ1入り」である。現在は欧州でプレーする古橋亨梧(中央大→岐阜→神戸→セルティック)、坂元達裕(東洋大→山形→C大阪→オーステンデ)が当てはまるが、彼らの成功がJ各クラブの補強戦略を変えてこの数年「個人昇格選手」が一気に増加している。

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変わりゆくチームの補強ルート