「受信契約は視聴者の義務ですから、必ず入居時には加入を勧めています」と語るのは地方のある仲介店店長。毎日の朝礼、終礼で契約取得を促し、目標達成を確認しているという。

「特に初めて一人暮らしを始める地方出身の学生は入りやすいです」(仲介店スタッフ)

 不動産会社は、NHK放送受信契約の取次業務の一部を代行しており、ホームページでは「NHK取次件数アップの秘訣」といったツールもダウンロードできるようになっている。多数の契約を取ると追加のインセンティブ(報奨金)も支払われる仕組みという。業者にとって大きな収益源になっているとみられる。

 全管協の公式ホームページには、1991年に全国の賃貸管理会社が結集し作ったとあり、加盟企業一覧には全国の賃貸管理・仲介会社、約1700社が名を連ねる。付帯商品の販売は、全管協の業務の一つだ。

 全管協は年に1度、帝国ホテルやパレスホテルなど都内の超高級ホテルで付帯商品販売の成績優秀者を表彰するイベントを開いている。

「付帯商品の販売だけで年間3億円を売り上げた」

 数年前、筆者が取材したイベントでは、1人の社長が仲介会社の社員ら1千人近い参加者の前でそう豪語した。中には「仲介手数料ゼロ」という広告で入居者を集めて、付帯商品で稼いでいると説明する人も。会場が異様な熱気に包まれる中、前出の社長は「付帯商品販売の原価はゼロです。売れば売るだけ純利益です」と繰り返した。

 賃貸物件を主に扱う不動産仲介業者にとって、最大の収益源は仲介手数料だ。来店し契約する入居者が多いほど収益が上がるため、かつてはいかに駅前の好立地に店を出すか、人口密度の高いエリアに集中して出店するかという「多店舗展開」が勝敗のカギを握った。

 しかし、パソコンやスマホでの部屋探しが主流となり、店舗の維持コストが重荷に。仲介手数料という本業に加え、付帯商品での収益を追わざるを得ない状況になっているという。ある仲介会社社員はこう話す。

「当社も付帯商品は販売しているし、その売り上げは仲介手数料が減る中で年々重要なものになっているのは事実です。本業でもうけるのが本来の道という気持ちはいつもありますが」

(ライター・石田草光)

AERA 2019年1月14日号より抜粋