初の男子プリキュアに変身したのは、美形の人気フィギュアスケーター、ジェンダーレスな男の子としてたびたび登場する若宮アンリだ。ステキだなと思えばドレスも着る。「君、男だろ?」と半笑いで聞く相手には「だから何? 僕は自分のしたい格好をする。自分で自分の心に制約をかける、それこそ時間、人生の無駄」と言い放つ強さを持つキャラだ。しかし、大会に向かう途中で交通事故に遭い、フィギュア生命を絶たれてしまうのだ。さすがのアンリ君も絶望に支配され、その心を敵に利用されて敵側に落ちてしまう。

 プリキュアたちは力を合わせて彼の心に呼びかけ、必死で応援をする。思いが通じ「これは僕のなりたい若宮アンリじゃない!」と自分を取り戻した彼は、プリキュアの力をかりて「キュアアンフィニ」へと奇跡の変身を遂げる。そして再び華麗なスケートで皆を魅了する──。

 しかし、夢から醒めるように変身が解けると、体は事故に遭った元の状態に戻っていた。それでも彼は笑顔で力強く言う。

「僕はもう一度、自分のなりたい自分を探すよ。たとえ若宮アンリの体でも、若宮アンリの心を縛ることはできないんだ」

 kasumiさんは言う。

「このセリフこそ、制作者が伝えたかったことではないでしょうか。肉体は精神を定義づけるものではない。夢を叶えたいという強い想いさえあれば、どんな属性を持った子どもたちも未来は無限大なのだ、と」

「なんでもできる、なんでもなれる。輝く未来を抱きしめて!」

 これは「はぐプリ」のキャッチコピーであり、キュアエールが変身するときの“名乗り”でもある。子どもたちに向けた言葉だろうが、大人だって心に沁みる。みんなを応援して癒やしながら、「はぐプリ」は残り数回を駆け抜ける。(ライター・大道絵里子)

AERA 2018年12月24日号

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