地震の影響で停電して真っ暗になった札幌・ススキノの繁華街/9月6日午前3時39分 (c)朝日新聞社
地震の影響で停電して真っ暗になった札幌・ススキノの繁華街/9月6日午前3時39分 (c)朝日新聞社

「甚大な被害を受けたのは自分だけでないことはわかっていますが、一度、『被災地』に認定されたインパクトは想像以上でした」

 2018年9月6日、北の大地を襲った北海道胆振東部地震から3カ月。道内有数の観光地・小樽でホテルを経営する男性(48)は、今も拭えない「北海道=被災地」という風評と格闘している。あの日、地震の影響で半年先までの予約、およそ2千人を失った。5千万円の収入が一夜で絶たれたことになる。男性は、地震だけならまだしも、全道がブラックアウトした一斉停電が決定打だったと振り返る。

「日本の地図から北海道が消える演出がテレビで繰り返し流され、観光に行く場所ではない、危険だという強烈なイメージが作られました」

 北海道庁経済部観光局などの10月末の発表によると、道全体の宿泊キャンセルはおよそ94万人。被害金額は356億円に上る。とくに打撃が大きかったのが、海外からのインバウンド旅行者のキャンセルだ。外国人観光客のトレンドを扱う専門メディア「訪日ラボ」編集長・根本一矢さんは、北海道庁が発表した「17年度観光消費額単価」をもとにそのインパクトをこう分析する。

 訪日外国人の観光需要のうち、宿泊を伴うケース1件あたりの単価は13万1428円で、日帰り道内観光客の消費単価4313円の実に30倍にあたる。宿泊を伴う道外からの日本人旅行客の客単価7万3631円と比べても、およそ2倍。

「訪日外国人はほとんど宿泊を伴う観光なので、訪日客1人のキャンセルは、最も客単価の安い道内からの日帰り客30人分。国内旅行で北海道を訪れる日本人宿泊客2人分の損失を生む計算となります」

 北海道の10-12月期における入込客数は現在、精査中だが、地震発生の翌10月は前年比、マイナス78%まで落ち込んだ。地震によって失った観光需要を喚起し、風評被害の早期払拭を目指した政府の動きは早かった。81億円もの予算を投下した「北海道ふっこう割」を発表したのだ。

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