教員の長時間労働が問題になるなか、それを助長する制度を変えるため、現場の教員たち3万筆以上の署名が文部科学省と厚生労働省に提出された。教育学者たちからは、「いい教育のために働き方を犠牲にしてきた」ことへの反省が聞かれた。12月3日発売のAERAは特集「親と先生682人の本音 『学校が不自由』9割」で、この問題について詳報している。
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「1990年代まではいかに教育を良くするかという議論をしてきたが、2000年代以降、教員の働き方について発言していくことが大事になってきた。『こんなに教育は素晴らしいのだから頑張れ』と教育学者が教員を追い詰めてきた部分については個人的に責任を感じている」
そう語るのは日本教育学会会長を務める広田照幸・日本大学教授だ。教員の過労死ラインを超す長時間労働が問題となるなか、いい教育のために教員の働き方を軽んじてきたという反省が、教育学者の間でも広がっている。
発言がなされたのは12月4日、「給特法改正」を求める署名提出後に開かれた会見の席だ。署名は現役の公立高校教員・斉藤ひでみさん(ハンドル名)が今年2月インターネットで開始。集まった3万2550筆の署名をこの日、文部科学省と厚生労働省に提出した。
「給特法」と呼ばれる「公立学校教員の給与に関する特別措置法」は1971年に制定された、いわば教員を定額で「働かせ放題」にすることを容認した法だ。給料の4%を「教職調整額」として支払う代わりに、時間外手当や休日勤務手当を支給しないと定めていて、教員の長時間労働の元凶と目されている。
「行政も教育学者も給特法のもとコスト意識が欠落し、『子どものため』という名目のもと、人や金などの十分な手当を考えずに施策を進めてきた。そこに問題がある」
と、内田良・名古屋大学准教授は語る。
「90年代、教育が社会的責任からサービスへと変わり、保護者との関係が変容したことも教員の多忙を促進した」