生徒や教師を苦しめる“ブラック部活”。今、そんな部活を“ホワイト”にすべく、動き始めている部がある。
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静岡県の静岡聖光学院高校のラグビー部は9月、「目指せ!脱ブラック部活」と題し、「部活動サミット」を開いた。生徒たちが主体的に取り組む部活動として、広島県立安芸南高校サッカー部、北海道札幌南高校ラグビー部など六つのチームが集まり、取り組みなどを報告。遠方からの交通費はクラウドファンディングで資金を募った。
このサミットに招かれた、埼玉県春日部市立豊野中学校バスケットボール部顧問の田中英夫さん(60)は「主体的練習」とはどうすることかを話し、安芸南サッカー部は、仲間のいいところを投稿し合う「いいねBOX」や、練習試合の後に戦った相手校とする「感想戦」について報告した。
サミットのきっかけは、静岡聖光ラグビー部員が安芸南サッカー部の取り組みを、生徒だけで視察に行ったこと。
「広島から帰ってきたら、自分たちで主体的に取り組む部活をもっと知りたい。学びたいと生徒が言い出しました」
と、同校ラグビー部監督の佐々木陽平さん(41)。佐々木さん自身も、以前に安芸南サッカー部監督の畑喜美夫さん(53)の練習を見て衝撃を受けた。
「私もそうでしたが、つい先回りして口出ししてしまう監督が多いけれど、畑先生は本当に何も言わない。それでも、部員たちが互いに的確にアドバイスし合っていた。部員は監督が口酸っぱく言うより成長するんじゃないかと思いました」
まずは部員に主体性を生み出すため、道具係など「一人一役」を割り当て、各自が責任を持って考えて役目に取り組む仕組みを作った。中には、「主体性係」という自らの主体性を見せたり、主体性とは何かを追究したりするユニークな係もある。
「こちらの言うことを聞かせるという発想は捨てました」
と、佐々木さん。かつて別の学校では、毎日長時間練習するという部活指導を行っていたこともある。だが、静岡聖光で「主体的に動く部活」を本気で目指していることを部員に伝えると、変わっていった。