ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 おどろきました。

 カルロス・ゴーン日産自動車会長が逮捕、ということで、疑われているのは報酬過少記載、投資資産の流用、経費の不正支出なんだそうですね。事件の解明は当局に任せるとしても、発覚のきっかけとなったのは日産社内からの内通者の存在のようです。

 ゴーン会長の公私混同疑惑はあちこちでうわさされていたこともあり、やっぱりか、というお声も多いようですが、「今」というタイミングに何やらきな臭いものを感じているのはワタクシだけではないでしょう。

 ただ、まず申し上げておきたいのはゴーンさんが日産のトップにならなければ、日本独特の「ケイレツ」といった制度の解体はあり得ず、今でも日本は同じようなことを続けていたはずです。その意味で日産のみならず、日本の自動車業界、いや、製造業界における恩人と言ってもいい人です。日産の社員だってその事情は痛いほど知っている。だから恩人に石を投げることは良しとしなかったんだろう、と勝手に想像しております。一方で、今の若い世代はそういうゴーンさんのご苦労を多分知らない。なんだ、あんな高給を取りやがって、揚げ句の果てに経費まで流用かよ! 的な文句を言う輩も出てくるだろうと思います。

 はっきり言っておきますが、経費流用はしないけどぼんくらな経営者よりは、経費流用があったり、愛人がいたりする敏腕経営者の方が、社員・株主にとってははるかに有益です。モラルが高い=経営者としての能力が高いわけではないことは、サラリーマンの皆さんならわかっておられるのではないでしょうか。

 あの時代にゴーンさんが来なければ、日産は恐らく無くなっていたとみています。その意味での彼の業績をすべて帳消しにすることはあってはなりません。ワタクシとしては、「黒船」である彼の存在が、山一証券や北海道拓殖銀行の倒産で泥沼だった日本経済を救済したんだと思います。

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