京都市内にある京セラの本社には100畳の和室があり、夜な夜な社員たちがコンパを開いている(撮影/滝沢美穂子)
京都市内にある京セラの本社には100畳の和室があり、夜な夜な社員たちがコンパを開いている(撮影/滝沢美穂子)
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1985年ぐらいの京セラのコンパ風景。当時社長だった稲盛和夫氏(中央)を囲んで若手社員が身を乗り出しながら語り合っていた(写真:京セラ提供)
1985年ぐらいの京セラのコンパ風景。当時社長だった稲盛和夫氏(中央)を囲んで若手社員が身を乗り出しながら語り合っていた(写真:京セラ提供)

 飲み会の効果をいち早く経営に生かしたのが、京セラの稲盛和夫名誉会長だ。日本を代表する名経営者が重視した「コンパ」について元側近が語った。

【写真】1985年ぐらいの京セラのコンパ風景

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 京セラやKDDIを創業し、困難と言われた日本航空の再建をわずか2年で軌道に乗せた日本屈指の経営者、稲盛和夫・京セラ名誉会長(86)。稲盛氏に師事する経営者は多く、稲盛経営を学ぶ「盛和塾」には1万3千人を超える経営者が参加する。

 稲盛経営の柱はフィロソフィ(経営哲学)とアメーバ経営(管理会計)。だがもう一つ、これがなければ稲盛経営は成り立たないと言われるのが、実は「コンパ」だ。稲盛氏はかつてこう語っている。

「会社を経営するうえで、心の通じ合う関係を大切にしてきました。こうした人間関係を築くために、コンパと称する飲み会を京セラでは盛んにやってきました。上司と部下でも、信頼関係があれば、言いたいことをはっきり言えますからね。人との絆を強めるには、お互いを知り合うことがスタートです」(週刊朝日2013年11月8日号)

 コンパといえば、学生や若者が使う「新歓コンパ」や「追いコン」(追い出しコンパ)などのイメージがある。稲盛経営哲学の重厚なイメージに対して似つかわしくないような気もするが、稲盛さんが大切にしてきたコンパは単なる親睦のための飲み会ではない。経営陣から新入社員まで胸襟を開いて本音で語り合い、みんなで目指すベクトルを合わせていく場なのだ。

 京都市内にある京セラの本社ビルには、社員同士が飲み会を開く100畳敷きの大広間がある。稲盛イズムを具現化した空間だ。

 稲盛氏は「コンパ」にどう向き合ってきたのか。1991年に稲盛さんの秘書になり、約25年間すぐ近くで仕事をしてきた京セラ元常務の大田嘉仁さん(64)はこんなエピソードを教えてくれた。

 あるとき、やや業績の悪い部署でコンパを開いたときのことだ。稲盛さんも参加し、席を回ってビールをついでいた。社員一人ひとりから本音を聞き出し、「お前にはこういう役割がある」と励ましていくうち、参加者の熱気は高まり、大盛会となった。

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