だが、<お金を増やすことに近道はないし、魔法もない>。村上さんは、「物事を数字で理解して、本質を見極める能力を高めることが肝心」と説く。村上少年は百貨店で値札を見るのが好きで、近所のたこ焼きが値上がりすると腹が立った。こうした日常で「どうやって値段が決まるのか」という経済の基本をつかんだ。

 大人でも遅くはない。村上さんは投資の秘訣に「期待値」を挙げる。必要な要素や数値を考えて儲かる確率を算出する手法を指す。本書ではその力を鍛えるゲームも紹介する。日本の復活には、お金に対する個々人の意識を変えることが第一歩になる──壮大な構想だ。

(ジャーナリスト・大竹哲也)

■書店員さんオススメの一冊

『こころの四季』は、児童精神科医・滝川一廣さんが自らの体験や思索を振り返るエッセー集だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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『子どものための精神医学』など、児童精神医学を豊かに広げてきた著者の含蓄あるエッセー集。運動会や遊びといった幼少時の記憶や精神科医としての臨床経験が、四季の移(うつ)ろいに重ねてたどられ、滝川精神医学のエッセンスを振り返るものとなっている。

 新米医師の時に担当した知的障害のある青年が、深い孤独のうちに縊死(いし)したことを記す「大晦日」。障害や、虐待などの問題を抱える子どものこころを見つめ支えてきた著者の原点を象徴するエピソードの一つと思われ、特に印象に残った。

 本書は『あしながおじさん』など文学作品から、社会とこころの有り様も描き出される。絵本『ちいさいおうち』に文明批判のテーマを読み、東日本大震災後も原発に依存する文明の行く末を見つめる。四季とともに我々の未来はあるだろうか。著者の祈りを感じる。

AERA 2018年11月26日号

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