海野教授によると、トランプ大統領が今回の中間選挙で最優先したのは上院、その次は州知事選だった。議会が大統領を弾劾(だんがい)するには、上院で3分の2の賛成が必要だ。下院は弾劾を発議することしか出来ない。中間選挙に向けて共和党が早くから劣勢とされてきた下院を落としても、実際の弾劾裁判が行われる上院さえ過半数を維持できれば、弾劾の問題はない。
●接戦・劣勢の州を回り、恩義を感じる人を増やした
州知事は大統領選で、献金や支持者集めに大きな力を発揮する重要な存在だ。特に16年の大統領選で民主党から奪還した大票田のフロリダ州は、なんとしても死守したい。こうした次の大統領選をにらんだ中間選挙戦略は今夏には既に実行されており、これに従って応援に入る州を効率的に決めていた。トランプ大統領は選挙最終盤の11月1~5日、モンタナやインディアナ、フロリダやミズーリなどの州を精力的に回った。いずれも上院や州知事選で接戦、あるいは共和党候補の劣勢が報じられていたが、トランプ大統領が何度も応援演説に入った結果、逆転勝利を導いた州もあった。上院ではテキサス州、州知事選ではフロリダ州などが典型的な例だ。
米連邦公務員として米上院予算委員会(共和党)で10年間の勤務実績がある中林美恵子・早稲田大学教授(米国政治)が、共和党内部の実情を語る。
「今回の中間選挙では、トランプ大統領に恩義を感じる人たちが多く誕生しました。共和党や上院を救ってくれたという思いがあり、本当の意味でトランプ党になってしまったところがある。従来の共和党はどこに行ってしまったんだろうと思ってしまいます」
トランプ政権に厳しい中林教授だが、今回の中間選挙については、トランプ大統領を「80点」と高評価した。
「大統領への反感が広がっていたことを考えると、本来であれば、もっと民主党が勝ってもよかった。それを最終盤でトランプ大統領が巻き返したというのが私の印象です。劣勢と言われた所でも、いくつか逆転している。(上院の)テキサス州は、トランプ大統領がてこ入れしなければ勝てなかったと思う。トランプ大統領にしてみれば、結構な結果だと思っているはずです」
中林教授もトランプ大統領の中間選挙戦略は、20年の大統領選を見据えたものだったと考えている。その上で、「トランプ大統領の戦略の一つは、危機感をあおること」だと強調する。