中間選挙は、トランプ大統領に選挙戦略の手応えを実感させる結果だった。本番は2年後の大統領選。再選へ向け、偏向政策が過激化する危険性がある (c)朝日新聞社
中間選挙は、トランプ大統領に選挙戦略の手応えを実感させる結果だった。本番は2年後の大統領選。再選へ向け、偏向政策が過激化する危険性がある (c)朝日新聞社
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ニューヨーク州立大学に通う学生に届いた手書きのはがき。民間の政治団体からで、トランプ政権を止めるための重大な選挙になるとし、投票を呼びかけている(写真:読者提供)
ニューヨーク州立大学に通う学生に届いた手書きのはがき。民間の政治団体からで、トランプ政権を止めるための重大な選挙になるとし、投票を呼びかけている(写真:読者提供)
米国議会は上下院で「ねじれ」(AERA 2018年11月19日号より)
米国議会は上下院で「ねじれ」(AERA 2018年11月19日号より)

 米中間選挙の結果は「ねじれ議会」。新風を起こした民主党が下院で過半議席を奪還した。それでもトランプ大統領は2年後の大統領選再選に手応えを得た。「大成功」と評した言葉の裏に、したたかな戦略が隠れている。

【図】米国議会は上下院で「ねじれ」

*  *  *

「今夜は大成功だ。みんなありがとう!」

 米国時間の11月6日夜、激しく分断する米国社会を背景に、異様なまでの盛り上がりを見せた中間選挙の開票作業が続く中、トランプ大統領はツイッターで「勝利」を宣言した。ちょうど下院で野党・民主党が過半数を上回る議席を確実にしたと各メディアが速報したばかりのタイミングだった。上院では与党・共和党が過半数を維持することが既に報じられていた。

 いわゆる「ねじれ議会」だ。

 大統領の政策を反映した法案が、野党支配の下院で通りにくくなることを意味する。当然、トランプ大統領は、厳しい政権運営を迫られる。それだけに、上下両院で多数を占めた共和党から民主党が下院を奪還した結果に、大統領の「大成功」のコメントは、多くの人に「負け惜しみ」と映った。

 コメントがツイートされると早速、トランプ大統領が「フェイクニュース」と激しく批判してきたCNNのキャスターが生放送でかみついた。

「全く大成功ではない。これから議会で激しいチェックを受けるのだから」

 日本の報道でも、発言の意図について、記者の様々な見方が紹介された。

「大統領の独特な皮肉のきいた言い回しで危機感を表したのだろう」

「上院は過半数を維持したので、ほっとしたのだとみられる」

 そこは極めて非常識で予測不可能な大統領。負け惜しみでも皮肉でもないトランプ流の戦略が、発言には隠されていた。

「トランプ大統領の計算通りになったと思いました」

 これまでオバマ前大統領やヒラリー・クリントン氏の大統領選挙の草の根活動に参加してきた心理学博士の海野素央・明治大学教授(異文化間コミュニケーション論)は、今回の中間選挙の結果について、そうした第一印象を持ったという。7月以降、何度も米国に行き、トランプ大統領の選挙応援集会などを見てきた海野教授は、その意図をこう説明した。

「トランプ大統領は選挙集会で、抵抗(Resist)ばかりの民主党、それでも結果(Result)を出す共和党という対立構図を強調してきた。同じRから始まる言葉で殺し文句を連発する。とても分かりやすいから、有権者にインプットされる。民主党が下院をとったことで、法案を通さないといった抵抗が目立つようになるだろうから、民主党はただの抵抗集団だと、さらに攻撃しやすくなった。全ては2020年の大統領選挙戦略です」

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