小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
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写真:gettyimages
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 年々浸透して大規模化する一方のハロウィーンですが、今年はもう、10月に入ると週末のショッピングモールなどでハロウィーンの仮装をした人々を見かけるようになりました。各所でイベントも開かれているようだし、なんなら10月に入ったらいつでも仮装して良しということか。

 今から15年前、長男を産んだ頃には、当時住んでいた東京都目黒区の住宅街では外国人の住む家を中心にポツポツやっていた程度でした。それが3年後に次男を産んだ頃には住宅地ぐるみの催しに拡大。とはいえ地元の人々が面白がってやっている程度だったのですが、年を追うごとに加速度的に規模が大きくなり、遠隔地からめちゃめちゃ本格的な「重仮装」をして訪れる見知らぬ親子連れなどが出現し、交通事故も起きかねないようになったので、マップ制作やら参加申し込み制度やらで複雑化し、牧歌的な地元の行事が殺気立った町内会の催しへと変貌していったのでした。

 ああこれは何かが起きていると思ったのは、駅前の商店会がハロウィーン祭りなるものを企画して、綿あめやら焼きそばやら、にわか仕込みの着ぐるみの徘徊やらで人を集め始めた時。その祭りも今やすっかり洗練されたものになっていると聞きます。

 そしてご存じ、毎年渋谷では尋常ならざる盛り上がりがニュースに。みんなスマホをかざして、SNSで仮装を披露するのに忙しそう。映えますよね、ハロウィーンは。何しろ仮装ですから。だけど羽目を外しすぎて逮捕者まで出る騒ぎになっているのは困りもの。渋谷にはワンナイトラブ目当ての若者も繰り出して、何やら生ぐさい祭りの場となっているようです。かつてのクリスマスの狂奔ぶりもどうかしていたけど、もはや由来なんてそっちのけのバカ騒ぎ。これに飽きたら次はイースターかな。町ぐるみでイースターエッグを捜せ!とか?

 ちなみにオーストラリアの家の近所では近隣の幼児たちを息子たちがお化けの格好でおもてなしするぐらい。至ってのどかです。渋谷を見たらびっくりするだろうなあ。

AERA 2018年11月5日号