

高関税の応酬が続き、激しさを増す米中貿易摩擦。先行きの見えない世界経済に、すでに警戒感を抱いている日本企業も少なくない。
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狭い路地に中小の町工場がひしめく東京都大田区。10月半ば、小さな金型加工会社の10畳ほどの作業場で、若い男性が旋盤と向き合っていた。
「アルミやステンレスなど原材料の値段は、以前より1割ほど上がっている。(米中貿易摩擦は)いい材料にはなり得ない」
自動車関連の金型を作るという男性は、作業を止めてそう話した。取引先の設備投資の伸び悩みから、今年に入って売り上げは3、4割減ったという。
中国の国家統計局が10月19日に発表した、今年7~9月期の国内総生産(GDP)は実質6.5%増で、約9年半ぶりの低水準に減速した。大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジストはこう分析する。
「(米中摩擦の)影響が徐々に出てきている。機械関連に代表されるように、中国の需要に依存している企業は直接的な影響を受ける可能性がある」
7月6日に米国が中国からの輸入品に高関税をかける制裁を発動して以降、両国の貿易摩擦が激しさを増している。
ロイター通信が10月に公表した、日本企業約250社を対象に行った調査では、33%が「実際に影響が出ている」と回答。製造業が中心で、「輸送用機器」「化学製品」「鉄鋼・非鉄」で7割超の企業が懸念を示した。
中国に拠点を置く日本企業の中では、生産拠点の見直しも広がり始めた。
日本電産は、中国・浙江省にある自動車や家電向けの部品の生産拠点を、メキシコ・モンテレイなどにある数カ所の自社の生産拠点に移す方針だ。同社は中国の工場で作ったパワーステアリングやエアコンのモーターなどを米国に輸出しており、制裁関税の影響を受けている。2018年度で約200億円を投じて、既存の施設近くに建物を増設するなどして生産を移管する。広報担当者は「(米中摩擦は)簡単に解消できることもなさそう」と話す。