子育てでも教育でも、『お前はこういう道を行け』というのは傲慢です。だから、まずは選択肢を提供してあげること。そのうえで大切なのは、子どもが選んだ選択肢に対して、十分なサポートをすることです」

 N高校では、進学したい生徒は予備校講師らによる練度の高い入試対策授業を受けることができるし、ライトノベルを書きたい人なら、本物の作家や編集者に作品を講評してもらえる。

「3年間学んで社会に出たとき生きていけるすべをN高校で身につけてもらいます」

 その、客観的な評価軸が進学実績であり、就職実績だ。すでに編入学生が難関校を含む多数の大学や企業に巣立っていった。来年3月には、高校入学時から3年間をN高校で過ごした生徒たちが初めて卒業する。

 川上さん自身は娘が生まれて、変わったことがあるという。

「子どもが生まれる前は、こういう子育てをしたい、こうなってほしいという考えがいろいろありました。でも、妻が分娩室に入って、我が子が生まれてくるのを待っている間にその意識は変わって、無事に生まれてきてくれればそれでいいと思った。いまはシンプルに、子どもが幸せに育っていってくれればいい。どんなふうに成長していくか、ただただ楽しみです」

(編集部・川口穣)

※AERA 2018年10月29日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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