南海キャンディーズのブレイク前。事務所が不可解な理由で仕事のオファーを断っていると聞いた。「ヤバい腐る!」という思いがよぎったが、ここで事務所のせいにして努力を怠る選択肢を登場させてはならない。賞レースでの実績という「防腐剤」や自信貯金を駆使して、前に進む選択肢を考える。「路上でネタをやろう」。しかし相方の声が小さいためウケない。それでも事務所の態度を思い出し、あえて自分をイライラさせて、その怒りでサボる選択肢を消す。

 そんなある日、劇場の支配人が交代し、舞台出演者決定のシステムが変わることになった。新システムではトップ3組の下に1軍から3軍まで置かれており、1軍スタートの自信はあったが、結果は2軍。そこで1軍の芸人のあら探しをして自己肯定するのではなく、逆にあえて彼らの行動を観察し、嫉妬の炎に薪(まき)をくべ、彼らを倒すためにはどんな努力をしなくてはいけないか考えメモを取り、すぐそれに取り掛かる。そうすれば彼らも自分の餌になってくれたということで怒りが収まる。

 圧倒的な敗北感は次の行動を取るエネルギーに変換すればいい。感情の有効利用を徹底的に考え抜いているのだ。

「内弁慶なので直接的な攻撃をしない。何とか自分の成長で対峙したという気持ちにするという方法なんです」(山里さん)

 こういった感情マネジメントは不条理にさらされ続けるビジネスパーソンにこそ必要だ。まずは爆発を避けること。(編集部・小柳暁子、川口穣)

AERA 2018年10月15日号より抜粋

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