七之助:3人の「吉三」の人間ドラマを描いた「三人吉三(さんにんきちさ)」のお嬢吉三は父も演じていますが、(父の)言いつけに従って(尾上)菊五郎のおじさまに教えていただいたお役です。父がそんなふうにいつも先々のことを考えて、自分だけでなく先輩方にも教わるよう考えてくれたのもありがたかったです。

勘九郎:僕が平成中村座の舞踊劇「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」で関守関兵衛こと大伴黒主をやるときは、(中村)吉右衛門のおじさまに習うように言われました。踊りも父の持ち味とは違う「楷書の踊り」を身につけたほうがいいと、(十世坂東)三津五郎のおじさまのところへ習いに行かされました。

七之助:「佐倉義民伝」で演じるおさんは、(松本)白鸚(はくおう)のおじさまの女房役ですから、ご一緒できる喜びを感じつつ、夫への深い愛を表現できるようにしたいです。

「助六」で演じる花魁の揚巻(あげまき)は、玉三郎のおじさまに習います。まさに歌舞伎の立女形の役で、おじさまが助六の母・満江で出てくださることにも感謝しています。父はとにかく、玉三郎のおじさまに習うようにと言っていましたし、おじさまは役を教えてくださるだけじゃなく、本当にたくさんのことを伝えようとしてくださるんです。

勘九郎:僕なんて、助六を演じる(片岡)仁左衛門のおじさまの兄役なんだよ(笑)。一体どうすればいいんだろう。でも、偉大な先輩のおじさまが助六をなさるんだから、すぐそばで匂いを感じながら作り上げていきたいです。助六と、僕が演じる白酒売(しろざけうり)はキャラクターの違う兄弟。父がやったとしても、おじさまの助六なら、どんな白酒売がいいのか必ず考えただろうと思うので、僕もそうしたいです。

七之助:父がどういうふうに考えていたか、どういうふうにやっていたか。僕は常に父を意識し、父のことを思いながら毎日舞台を務めています。舞台の上で父のことを忘れたことはありませんし、舞台に出る前に父の名を呼ばずに出たこともないです。父が生きていた時は安心していた部分もあるし、甘えていた部分もあるけど、いざ言ってくれる人がいなくなったことの恐ろしさ!

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