経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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これまで、今の米国経済(ひいては世界経済)が置かれている状況は2008年とは全く違うので、当時の再現を議論するのはナンセンスだ、というお話をしました。主に金融構造の違いを指摘したわけですが、わたくしは経済評論家である一方で米国での経営者でもあるので、その視点からも一つお話をしておきたいと思います。この前のAIの話を併せて読んで頂くとちょうどいいかもしれません。
例えばアメリカ企業のこの10年での時価総額トップ5はどのように変わったと思われますか? リーマン・ショック前の株価がほぼピークだった06年のランキングは(1)エクソンモービル=5400億ドル、(2)GE=4630億ドル、(3)マイクロソフト=3550億ドル、(4)シティグループ=3300億ドル、(5)バンク・オブ・アメリカ=2900億ドルでした。
17年は(1)アップル=7940億ドル、(2)アルファベット(グーグル)=5930億ドル、(3)マイクロソフト=5060億ドル、(4)アマゾン=4290億ドル、(5)フェイスブック=4140億ドルです。
いかがですか? ほぼ総入れ替え! かろうじてマイクロソフトが踏ん張ったのみ。もうこれは米国の経済構造そのものが10年前とは別物、と言うしかありませんね。ちなみに日本のトップ5はほとんど変わっていません。
顕著なのはウォール街の企業が消えてしまったこと。一方でアップルとアマゾンの時価総額は今年既に1兆ドルを超えました。いわゆる「FANG銘柄」が上位を独占する中で、「再び金融危機が……」という考えは、もう時代に取り残されていると言っていいと思います。全く違う世界が来たのです。