小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
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例えば黙認されてきたセクハラギャグにも「イエローカードですよ」と明るく言う勇気を持ちたい(写真:gettyimages)
例えば黙認されてきたセクハラギャグにも「イエローカードですよ」と明るく言う勇気を持ちたい(写真:gettyimages)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 このところ、スポーツ界のパワハラや、いわゆるブラック校則と言われる理不尽な校則が問題視されています。4月の財務事務次官のセクハラ問題、5月の日大アメフト部のパワハラ問題など、今年に入ってから報道が相次いでいますね。

 これらはいずれも「この社会でやっていくなら理不尽なルールや暴力にも耐えよ」という暗黙の合意が成り立たなくなってきていることを示しています。耐えてなんぼの美学は、学校や職場という小さな社会だけでなく、日本全体に浸透していますよね。ハラスメントという概念が広がるにつれ、これは暴力なんだ、おかしいと言っていいことなんだという合意ができつつあります。

 昨年からの#MeTooの流れで、声を上げよう!という機運も高まったけど、実際にやるのはかなり勇気が要ります。怖くて声を上げられない、上げたくない人もいるはずです。追い詰められていたら、怒る力もない。

 だから、この「耐えてなんぼ」を変えるには、いま差し迫って困っていることはないけど、なんかこのイヤーな感じがなくなればいいなあ、という人たちがほんのちょっと変わることが大事なんじゃないかと思います。

 ほんのちょっとって例えば、職場で黙認されているセクハラギャグ連発おじさんに「今時そんなこと言うとイエローカードですよー」と明るく言ってみるとか、後輩を人前で怒鳴りつける癖のある同僚に、あれはパワハラだよと教えてあげるとか。

 あとは、自分がうっかり言ったことが不適切だったかな?と思ったときには素直に、「ごめん、今のは失礼だったね。次から気をつける」と言うとか、今までお愛想で笑っていた下ネタに笑わないようにするとか。

 社会を変えるというと大げさな感じがするけれど、自分の習慣を変えることはそんなに難しくないかも。そういう小さい変化が集まった時に、当たり前だったものが当たり前じゃなくなるんじゃないかと思います。

AERA 2018年9月17日号

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