ワンオペ育児・家事をなんとかツーオペに! 多くの家庭が日々、試行錯誤していることだろう。ただ、台所にはそれを阻む大きな壁がある。
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午後6時過ぎ、飲食関係の仕事に就く女性(33)は2歳の長女の保育園の迎えに行く。家に着くと娘が「ごはん、ごはん」ときかないので、フローズンフルーツでつなぎ、15分ほどで夕食を準備。19時前までに食卓につくようにし、食後は娘を風呂に入れ、寝かしつけ、洗いものをし、保育園のノート書き……。
「もう毎日、バタバタです」
保育園のママ友たちも、平日は夫をあてにできない似たりよったりのワンオペ生活。顔を合わせると出てくるのが家事をめぐる愚痴だ。とりわけ待ったなしで、日々繰り返される料理の負担感は大きい。
「パパが料理を作れるといいんだけど……」
そんなため息がこぼれる。
子どもが生まれると家事量は一気に増える。なかでも特に、料理の負担は妻に偏りがちだ。国立社会保障・人口問題研究所「第5回全国家庭動向調査」によると、妻と夫の家事分担の割合は妻が85%、夫が15%。そのうち夫が週1~2回以上行う家事のトップはゴミ出しの約4割。炊事はその半分の約2割と他の家事に比べても低い。
夫婦がともに対応できる「ツーオペ」状態が確立できるといいのだが、なぜ料理の負担は妻に偏るのか。『ワンオペ育児』の著書がある、明治大学商学部教授の藤田結子さんは次のように説明する。
「『夫の帰宅時間が遅いから』とよく言われます。それは無関係ではありませんが、根本原因とはいえません」
家庭動向調査の帰宅時間別の家事負担割合を見ると、17~19時台に帰宅する夫と22~23時台の夫では、その差は約5%にすぎない。
「根本原因のひとつは料理が愛情規範に強く関わっていることです。『愛情たっぷりの料理』とよく言いますが、『愛情たっぷりの掃除』とは言わないですよね? 女性は子どものために料理をしないといけないと思いこみがちで、男性も料理を作ってもらうことが愛情の証しととらえてしまう」(藤田教授)
加えて取材を進めるうち、もうひとつの要因が浮かび上がってきた。「冷蔵庫問題」だ。冒頭の女性はひとりで料理を担う本音をこう明かす。
「夫が料理を作ると、冷蔵庫に入っているものをこちらの計画とはお構いなしに使ってしまう。そんなことにイライラするぐらいなら、全部自分でやったほうが楽だと思うんです」
(編集部・石田かおる)
※AERA 2018年9月17日号より抜粋