無料で読めるタイトルが増えても、好きな漫画にはきちんとお金を払う人は多い。紙でも電子でも、漫画の健全な未来を探る動きが始まっている。
* * *
読みたいと思えば、常に手が届くところにある。漫画サイトを覗けば、1巻または複数巻無料で読める漫画がずらりと並ぶ。
都内在住の会社員女性(33)は、通勤中、こうした無料漫画をスマホで読む。だが、読んだ作品を買うことはほとんどない。
「買うほど面白い作品を見つけることは少なくて、面白いのは大体話題作。でも電子で読むとすぐ忘れちゃう(笑)。書店でポップを見て、『面白かったよね』と思い出して、アマゾンで買う。テレビやツイッターを見て、ポチることもあります」
書店ではなくネットで買うほうが多いのは、確実に既刊を揃え、ストレスなく読みたいから。
茨城県在住の会社員男性(31)は、TSUTAYAの漫画レンタルを週1ペースで利用する。気に入った漫画は、新刊を単行本で購入。キンドルも使うが、「やっぱり紙の本がいい」という。
「紙のほうがインタラクティブ。読み進めても気になったページにすぐ戻れるし、パラパラ読みもしやすい」
漫画の読まれ方も買われ方も変わった。漫画全巻ドットコムやまんが王など漫画関連事業を運営するTORICOのコマース本部長、田中香織さんは言う。
「漫画を書店ではなく、日用品と一緒にインターネットモールで買う人が増えたようです」
ネット販売は即時性が高い。テレビ番組が漫画を取り上げると、放送中に反響が表れる。
「最近では、『アメトーーク!』の『“HUNTER×HUNTER”芸人』の影響が顕著でした。放送を見込んで仕入れた『HUNTER×HUNTER』既刊35巻500セットは、3日で完売。書店なら翌日か翌週表れる反響が、ネットでは1分1秒単位で見えます」(田中さん)
6月から発売された『スラムダンク』の新装再編版も初回入荷分を3日で売り切り、最終的に1千件の定期購読が入った。
ポイントセール前に買い控えも起こるが、読者は変わらず漫画にお金を投下している。ただ、作品数が増え、買うまでのハードルが上がっただけだ。