ただ、この「報道されたら官邸に怒られる」というのが厄介だ。安倍内閣が長期化する中、他の省でも官僚の口を重くしている後ろ向きの「忖度」だ。

 イージス・アショアで最近、また防衛省が「官邸に怒られる」事態があったという。

 この米国製の最新鋭ミサイル防衛システムの費用について、防衛省は1基800億円とだけ説明してきたが、膨れあがると7月末に発表。1基1340億円、2基と維持・運用費などでしめて4664億円となった。

 省内で不満がくすぶるのは、「官邸に怒られる」理由が、経費が膨らんだというより、それが一部報道ですっぱ抜かれたというものだったからだ。

 ある幹部がこぼす。「細かい報道でいちいち文句を言われるのは勘弁してほしい。各局が情報管理ばかり気にしてますます縦割りになり、省内でまともな議論ができなくなる」

 防衛省では安倍内閣になって各局の局長が官邸に説明に行く姿が目立つようになった。例えば外務省では以前からだが、こうした省庁は官邸主導の名の下に各局がその手足のようになり、分断されやすくなる。

 8月3日、防衛省講堂。事務次官を離任した豊田硬氏が職員への挨拶で語った。

「最近気になるのは、若い人たちが自分の意見を開陳しないことだ。しかるべき会議に出れば堂々と意見を述べる文化がこの役所にはあったはずだ。防衛省に柔軟性が失われてきているのではないかと懸念する」

 若い人たちだけの話なのか。

 日本を取り巻く脅威の動向と、対応する兵器の費用対効果をイージス・アショアですら説明できずに、安倍晋三首相がこだわる年内の防衛大綱改定などまともにできるのか。

 官邸も防衛省も問われている。(朝日新聞専門記者・藤田直央)

AERA 2018年9月3日号

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