──なぜ、性別や年齢による加点・減点がまかり通っていた?

B:根本的な原因は医局制度にあるでしょうね。

C:医局とはゼミのようなもの。大学病院の教授が持つ講座とか、診療科に属する医師のグループというか。その大学の出身者だけでなく、他大学の卒業生も入れますけど、力を持っているのは圧倒的に同じ大学のOB。医学部生活を終えて医師の国家試験に合格したら、2年間の初期研修があるんですけど、それが終わったら大半の人が医局に入るんです。今年から「新専門医制度」がスタートしましたけど、医局に入ることで専門医としての経験を積んで、心臓外科や消化器系など、その道のプロになる、というイメージです。ただ、実際には体力があって安く働かせられる“兵隊”を確保するための専門医制度と医局制度としか思えない。

A:まさに、兵隊。特に、地方大学の医局はその傾向が顕著です。私が地方の大学病院にいたときは、東京出身の男性研修医と地元出身の女性研修医がカップルになると、「結婚したら男についていく可能性があるから、洗脳しなおさなきゃいけないな」と、先生方が話していました。大事な兵隊が減るから。

A:私はある大学病院で働いていたときに妊娠したんですけど、どんなにつわりがヒドくても、おなかが膨らんできても休ませてくれませんでした。実はそのとき、婚姻届を出していなかったので、上司の先生から「結婚もしてないのに妊娠して働けません、なんて知られたら、君のほうが恥ずかしいんじゃないの?」とまで言われました。結局、流産してしまったんですけど、その翌日から仕事をしろと……。2年前に子宝に恵まれましたけど、そのとき勤務していた大学病院でも「24時間ベビーシッターをつければ、働けるでしょ?」と言われました。(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年8月27日号より抜粋