田中氏は、この「大失敗4きょうだい」が破ってしまった危機管理の3原則を(1)痕跡を消さない・経緯を作らない(2)謝罪会見では「解毒」に徹する(3)犯した罪の上に新たな罪を重ねない──の三つだと指摘する。

 財務省は決裁文書を改竄して国有地売却の疑惑の痕跡を消そうとし、日大アメフト部の前監督は自らの関与を否定したうえで選手が反則タックルに至ったうその経緯を作ろうとした。加計学園も、2015年2月に加計孝太郎理事長が安倍晋三首相と面会したという愛媛県の記録のもとになった報告を、「部下の作り話」という話を作って誤魔化しているようにみえる。

「解毒」については詳しく後述するが、情報開示、謝罪、再発防止策の公表などで社会の怒りを鎮めることだ。これらの会見では、逆に毒を増やして危機を管理するどころか喚起してしまった。

 財務省は前次官のセクハラ発言の音声データが公開されているのに、被害女性が名乗り出ない限り証明ができないと開き直って世論を敵に回した。加計学園の会見では、加計氏は安倍氏との面会について「記憶にも記録にもない」と何の証明もできず、この後に愛媛県庁担当の記者クラブから求められた記者会見の要請にも7月4日、「今後の記者会見について対応予定はございません」という内容の文書をファクシミリで送るにとどまった。

 日大も、当時の監督とコーチの記者会見の司会進行役だった共同通信記者出身の広報担当者が、記者の質問を遮って会見を打ち切ろうとする姿が動画配信サイトなどで繰り返し再生された。いずれのケースも、やり方も内容も「解毒」とは正反対に、火に油を注いで隅々まで毒を行きわたらせてしまった。

 (3)の罪の上塗りについて、田中優介氏はこう解説する。

「最初に『犯した罪』の上に『隠して認めざる罪』を重ね、さらに『謝罪せずに改めざる罪』や『(辞任せずに)居座る罪』を重ねていくことで、ダメージは4倍どころか4乗に増幅する。弊社ではこの四つの頭文字をつなげて『お・か・し・い』と記憶してもらうようにしています」

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