自らの遺伝子を検査するサービスがあったり、犯罪捜査にDNAが一役買ったり、遺伝子、DNAをめぐる技術は年々進歩している。そんな中、自身や故人のDNAを形見として残すサービスが登場した。
ITやバイオ技術の進化が今後も進めば、故人のDNA情報をもとに、その姿をホログラムとして再現できるだろう。DNAから割り出した声の情報をAIの技術と組み合わせることで、亡くなった人と会話のようなことができるかもしれない。まるでSF小説のような夢のあるサービスを、今年7月から始めたばかりなのが総合葬祭業のメモリアルアートの大野屋。
「DNAパーソナルサービス」と名付けられた、このサービスでは、火葬すると永遠に失われてしまう故人のDNAを遺体の口腔粘膜や毛髪などから採取。DNAによる個人識別鑑定を行う数少ない民間機関である「法科学鑑定研究所」のラボで鑑定してもらい、その鑑定データを鑑定証とともにフォトスタンドに入れて届けるというものだ。
料金は税別7万8千円からで、フォトスタンドの中にはDNA情報を保管できる特殊なカードと鑑定証がセットになって入っている。すでに亡くなった故人だけでなく、生前に自分で申し込んでDNAの採取を行うこともできる。提携している法科学鑑定研究所では、完全なDNA情報を安全に保管するオプションサービス「DNAバンクサービス」も年間9800円で提供している。
同社広報室の上原ちひろさんは商品開発の経緯をこう語る。
「弊社では遺灰や形見を手元に保管しておくためのペンダントやリング、ミニ骨壺の企画・販売を行っていますが、愛するご遺族の形見を手元に置いておきたいというニーズは非常に大きいものでした」
そこで、まさに生命の設計図であるDNAを、大切な方の生きた“証し”として保管しておけるサービスはどうか、という社内のアイデアからサービスの開発を進めてきたという。
「遺伝子は、父親と母親から一対ずつ受け継いだ、貴重な家族の絆の証しです。自分のDNAと比べることで、故人と自分を結びつける確かな血縁関係の証明にもなります」(上原さん)