日銀が長期金利上昇の容認を決めると、住宅ローン金利の引き上げにつながった。貸出金利が1%を上回ると、所得税や住民税の控除メリットがなくなる。
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長期金利の上昇を受けて、大手銀行はさっそく住宅ローン金利の引き上げに動いた。今後はどうなるのか。一般人への影響を専門家に聞いた。
「長期金利は、少し長い目で見れば、0.5%程度まで上昇する可能性があります」
楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之さんは、上昇余地があると指摘する。
日銀はこれまで、長期金利が0.1%を超えそうになると、市場に資金を大量供給して金利上昇を阻止してきた。
「日銀は7月末の決定で、金利上昇阻止に動くラインを0.2%に引き上げたと見られます。金融市場は方向性重視ですから『日銀の次の一手も金利上昇か』と、目線が先へ移るのは当然のことです」
金利が上がるといっても誘導目標の「ゼロ%程度」と説明できる範囲内のようだ。というのも、日本は誘導目標を引き上げるほど好景気ではないからだ。日銀はともに発表した「経済・物価情勢の展望」で、2018~20年度の消費者物価の見通しを引き下げている。
「金利上昇による心理的な影響はあれど、実体経済に変化を与えるほどではない」(窪田さん)
みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也さんは、
「今年から来年にかけて、金利は動かないでしょう」
と、落ち着いていた。
「日銀は来年10月の消費税率引き上げを前提に、『当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する』と公表文に書き込みました。増税後の景気動向を見守る必要があるだけでなく、物価見通しも政府・日銀が共通目標とする2%に到達する見通しが立たないため、金利を上げたくても上げようがありません」(上野さん)
だが冒頭で触れたように、大手銀行の住宅ローン金利は引き上げが相次いだ。たとえば、りそな銀行が返済期間10年の金利の最優遇レートを、三井住友銀行やみずほ銀行は15年の金利を、それぞれ0.05%引き上げる。いずれも固定金利型だ。この型の金利は長期金利を基準に引き上げられる。日銀がほぼゼロ%の範囲内とはいえ上限を引き上げれば、貸し出しの金利も小幅ながら上昇する。