彼は、たぶん右サイドバック。さっきまで守備にカラダを張っていたと思ったら、今はもうゴール前。緑のフィールドをななめに横切って、綺麗なゴールを決めるところ。
時代の真ん中に配置される、メインストリームの男性タレントは、よく調味料に例えられる。しょうゆ顔、ソース顔、今なら塩顔。すべてとっつきやすいポピュラーな調味料だ。
彼らは、それともちょっと違う。例えるならば「隠し味」。美味しい料理の中に、密かに忍ばせた「スパイス」だ。
なんだかよくわからないが、料理が輝くように美味しくなるひとつまみの「スパイス」。
今までうっかり気づかなかったけど、面白かったあのドラマにも、この俳優さんが出てたなんて! あなたは今、ああッと胸を押さえてるはず。見てたよ、私、それ見てたよって。
とっくに彼のことを知っていたのに、全然彼のことを知らなかった。けれどいったん気づいたら気になって、知れば知るほどクセになる。それが「スパイス」、麻薬のような存在だ。
「スパイス男子」の沼は深い。だって、彼らの出演作は、べらぼうに多いから。遺跡発掘の旅の始まりだ。そして作品ごとに、見たこともない彼の顔を知る。
その長い経験で培った実力。安定感のある演技と、思いもよらない役柄に挑戦する勇気。王道の主役ばかりやるポジションではないので、作品のジャンルも多岐にわたる。
そんな「スパイス」系の中で、タレントとしての幅広さを持つのは、星野源だ。ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年・TBS系)で、大ブレークした恋ダンス。皆さんも、忘年会で踊りましたか?
彼はミュージシャンであり、エッセイストであり、数々のドラマにも出演している。いろいろなフィールドを持つだけに、キャラクターも変幻自在。
ドラマの中でガッキー(新垣結衣)の相手役・平匡さんを演じながら、主題歌「恋」を作詞作曲。ダンスまで踊るって、平成のうちに「平成の植木等」を襲名してほしいくらい。え? ちょっと違う?(漫画家&TVウォッチャー・カトリーヌあやこ)
※AERA 2018年8月6日号より抜粋