群れない、気にしない、バイタリティーあり──。
これが新時代の海外駐在員の妻、すなわち<駐妻>たちのようだ。なかでも商社員の妻たちは、現地の日本人社会にはびこる旧弊をものともせず、夫を陰に陽に支えているという。
そんな新時代の駐妻たちの実態に迫ってみた。
かつて駐妻たちは、まるで江戸時代の「大奥」さながら、ねたみとそねみが渦巻く「群れ」のなかで生きていた。
これまでインドネシアや中国など数カ国で商社員の駐妻として過ごしたアケミさん(43)が当時を振り返り語る。
「現地の日本人社会では大使閣下夫人を頂点とする『夫人会』に嫌われたら、もう生きてはいけません……」
この夫人会とは、海外で暮らす日本人社会のコミュニティーのひとつだ。ここでは駐妻たちは、みずからのアイデンティティーをはぎ取られ、夫の肩書のみを背負った「分身」としての振る舞いを求められる。
そこは支店長クラスの商社員の駐妻といえども、若いキャリア外交官の奥さまに気を使う「官尊民卑」の世界だ。
ノンキャリア外交官の妻として駐妻歴20年超えのユウコさん(48)は、外交官よりも下に位置される商社員や銀行員の駐妻たちをこう慮(おもんぱか)る。
「目立つ方は嫌われます。たとえば料理好きな大使夫人よりもお料理が上手な方は、それだけで無視されることもあります」
なかには、「公使夫人がお受験で失敗した大学の出身」という理由だけで、夫人会で目の敵にされ、帰国を余儀なくされた駐妻もいたという。
ところが、かつてこそ駐妻たちは、この夫人会の「お仲間」に入れていただくことをありがたがり、そこでの出来事に一喜一憂したものだ。だが近頃、様子が変わってきた。
キャリア外交官夫人(49)が不快そうな面持ちを隠さず語る。
「若い駐妻さん、それも商社員の奥さまは夫さんからの影響でしょうか。夫人会など気にもしないでお商売にご熱心です」
そもそも商社員の妻にとって夫人会など関心外だ。