伊藤忠が新設した男子寮「日吉寮」内のスタディーコーナー。バーカウンターやサウナ、大浴場など共用施設の充実が特徴だ(写真:伊藤忠商事提供)
伊藤忠が新設した男子寮「日吉寮」内のスタディーコーナー。バーカウンターやサウナ、大浴場など共用施設の充実が特徴だ(写真:伊藤忠商事提供)
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 かつては多くの大企業が有していた社員寮。バブル崩壊などを経てめっきりと減り、住宅補助制度といえば手当支給やマンションの借り上げが一般的だ。そんななか、総合商社では「寮の充実」が進む。

 伊藤忠商事は今年、東急東横線日吉駅から徒歩3分の好立地に、361戸という大規模な男子寮を新設した。自社物件としては18年ぶりの復活という。「健康経営」の一環として栄養価に配慮した朝食・夕食を提供するほか、希望者への禁煙プログラム提供などユニークな取り組みもある。このほか、女性寮2カ所、計90戸を社員寮として提供する。

三菱商事でも、2015年に女性向けの共同施設型単身寮を設置した。従来の男子寮やマンションタイプと合わせた戸数は、5大商社で最多の712戸。ジム・フィットネス専用室を備える寮もある。

 三井物産では、「寮生全員の顔が見える」規模をコンセプトに、最大150戸程度の寮を6棟、計624戸を用意する。住友商事、丸紅でもそれぞれ300~400戸程度を持つ。

 寮を保有する理由として各社が挙げるのが、部署を超えた関係性の醸成だ。「世代や組織の垣根を越えた交流を大切にする」(三菱商事)、「総合商社が総合商社たりえる横連携(総合力)を養成する」(三井物産)、「若手社員の早期育成と強い一体感の醸成」(伊藤忠商事)、「縦横斜めのつながりの育成」(住友商事)、「若手社員の交流と育成」(丸紅)。

 縦への深掘りから横連携へ、商社のビジネスモデルも変化しつつある現代。懐かしくも新しい商社の姿がそこにある。(編集部・川口穣、野村昌二)

AERA 2018年7月23日号より抜粋

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