
『戦争経済大国』(斎藤貴男著)は、経済大国・日本の成立過程を問うた一冊だ。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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朝鮮戦争、ベトナム戦争……。これらの戦争に対して、日本には加害者意識はない。しかし、現在の日本の経済的な繁栄は、アメリカが戦争で儲けた構造があり、そこに日本が組み込まれたことで得た「利益」によって形成されてきた部分も多いとしたら、どうだろうか。
著者は日本が結果的に戦争に協力し、利益を上げ、経済成長を成し遂げてきた現実を緻密な取材で次々と描き出していく。
同時に、間接的な形であれ戦争に関わることは、本当に平和憲法を守っていたことになるのか、と問いかける。
現在の日本を築いたもののすべてが戦争のおかげとは思いたくはないが、現在の日米関係を見るとうなずけることも多い。湾岸戦争については、この構造の現在を書く続編で論じる予定だという。それも楽しみに待ちたい。
※AERA 7月2日号