「子どもがたたかれたり、かまれたりしたとき、被害を受ける側にも理由があることを、きょうだいがいない分、息子には学びとってほしいと思っています」
保育園の延長保育を、異年齢の子と交わる“疑似きょうだい”の持てる場として、積極的にとらえている女性(47)もいる。
「息子はいま3歳ですが、年下の子の面倒を見るようになり、年上の子と接することで言葉の習得も早いように感じます」
世間にはひとりっ子について誤解が多く、親もそれに縛られがち。そう語るのは、自らもひとりっ子で、11歳の娘を育てる大学教員(47)の女性だ。
「『ひとりっ子だから寂しいでしょう?』と子どものころよく言われましたが、最初からきょうだいがいないので、正直、あまりピンと来ませんでした」
ひとりの時間が多いことは、むしろメリットだと感じている。きょうだいに邪魔されず、好きなことに没頭できる。女性は子どものころから読書が好きで、それが仕事につながった。
「これからの時代は、ひとりっ子に向いている」
と指摘するのは、『ひとりっ子の育て方』の著者、明治大学文学部教授の諸富祥彦さんだ。
「AIの時代には他人との勝敗を競うのではなく、独創性が大事になる。自分で考える力は、ひとりっ子は強いと思います」
多くの親がひとりっ子の子育てで心配するのは「わがまま」にならないか。しかしその認識は間違いと諸富さんは言う。
「ひとりっ子はマイペースに育つが、わがままにはならない。むしろ常に比較される、きょうだいのいる子のほうが人をおしのけていく。ひとりっ子の子育てで最も大事なのは、親が子どもに『ひとりっ子でごめんね』と言わないこと。親の言葉によって子どもは自らをかわいそうな存在だと思ってしまう」
余計な固定観念にとらわれず、子どもの個性をまっすぐ見つめること。それがひとりっ子の子育てでは特に大事なようだ。(編集部・石田かおる)
※AERA 6月25日号