経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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欧州が再び揺れ始めました。イタリアにおける反欧州連合(EU)政権成立の危機(五つ星運動・同盟)、さらには連立不能による再選挙からEU離脱など散々取りざたされ、世界的な株価下落の犯人にされました。しかし、それはいくら何でも悪乗りが過ぎるというもので(結局コンテ新首相誕生で落ち着いた)、ここでこれまでの欧州危機の経緯を振り返っておきましょう。
そもそも欧州問題は、2008年のアメリカの金融危機の時に予測できました。アメリカで起きたことは流動性危機で、金融機関同士が疑心暗鬼となり、特定の相手に限ってファイナンスをやめたために、リーマン・ブラザーズやベアー・スターンズが倒産し、保険会社のAIGも倒産すれすれまでいきました。結局オバマ大統領が見事な手腕を発揮し、連邦準備制度理事会(FRB)がすべての流動性を保証する形で危機を逃れました。
一方、不良債権化した証券化商品を大量に保有していたのはアメリカだけではなく、欧州の大手金融機関もでした。そして今度は欧州で自分たちの信用を守るために融資条件を締め上げると、相対的に財政の弱い国が財政危機に追い込まれていきました。
ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインなどをまとめて「PIIGS」と呼んでいた時代ですね。これが10年の欧州危機の発端となりました。今回イタリア国債10年物金利が3%などと騒がれましたが、当時は7%を軽く超えていましたから比較になりませんね。
12年に欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「責務の範囲内でECBはユーロ圏を守るためにできることは何でもやる用意がある。私の言葉を信じてほしい」と演説し、危機は収束します。